MSP Compression チュートリアル 5
マルチバンド・コンプレッション 1

チュートリアルを開いて下さい。

通常の場合、ベース、ドラムス、ヴォーカルやその他の楽器は、ミックスする前に個別にコンプレッサをかけますが、時として、これが不可能だったり、望ましくないことがあります。例えば、ラジオ局やDJ は、CD で提供されているものよりも音量が大きく、一定したサウンドを望む可能性があります。このようなとき、シンプルなコンプレッションではあまり満足のいく結果にはなりません。その理由は、ボーカルやドラムによって、持続音のパートのレベルが上下してしまうためです。これを避けるために、マルチバンドコンプレッサでは、オーディオスペクトルを帯域に分け、それぞれを独立して扱います。声がちゃんと聞こえるようにしたままで、十分なベースとコンスタントなリズムを得ることができます。

マルチバンドコンプレッサは、FM ラジオの音にスパイスを効かせるという本来の意図を超えて、創造的な使用法が見つけ出されてきました。かなり強烈な広い帯域にわたるヘッドバンガーミックスから始めた場合、このデバイスを使ってすべてのオクターブのゲインを可能な限り上げることによって、強固な音の壁(wall of sound)の効果を得ることできます。あるいは、わずかな制限をかけることによって、広範囲にわたる再生システムで快適に聴くことができるようなマスタリングを行なうことができます。

スペクトルバランス

良いアレンジャーはスコアを書く上で、どのように低音と高音のバランスを取ればよいかを理解しています。これにより、聴き手の注意をひきつけ、満足させることができます。これをスペクトルバランスと呼びます。同様な効果は、低音域、中音域、高音域、およびさらに高い周波数帯のコンプレッションを一貫性を保ちながら行なうことによって得ることができます。この場合、個々の音域のレベルが、中音域と高音域はそのまま、低音域は僅かに低く、高い周波数帯はいくぶん低めになるような曲線に合うように調整します。この曲線は、多くの成功を収めたアルバムがどのようにして良い効果を得ているかを総合的に分析した結果から導き出されたものです。

4 バンドコンプレッサは、最終的なミックスを固める際に優れた働きをします。C5mMultibandComp4band というパッチでは、omx.4band~ オブジェクトがどのように動作するかを示しています。実際、このオブジェクトは複雑なツールで、4個をはるかに超えた数のコンプレッサが結合されたものです。バンド(帯域)を指定したオートゲインコントロール(AGC)の前に、かなりの処理が行なわれます。

まず、ノイズなどの不要な音を取り除くための可変スレッショルドによるダウンワード・エキスパンダ(訳注:シグナルがスレッショルドを下回った場合に信号を減衰させるエキスパンダ)があります。次に全体の AGC があり、その後、シグナルは(大まかに言って)非常に低い音域、通常の低音域、中音域(ほとんどの楽音はこの音域になります)、高音域の4つのバンドに分けられます。高音域には第2のダウンワード・エキスパンダがあります。これは、高い周波数を持つノイズが特に聞き苦しいためです。それぞれのバンドでは、ドライブ(このスレッショルドは 0 に固定されていて、ゲインの値が大きいほど、より強いコンプレッションを行ないます)、アタック、リリース、最終的なミックスに送るレベルのコントロールができるようになっています。そして、何らかのピークが生じてしまうことを避けるために、最後のリミッタがあります。

まず、何曲かの商用の音楽(おそらく、すでにいくらか圧縮されているでしょう)を使って、3つのプリセットを試してみて下さい。outmix フェーダを操作して、バンドがどのあたりに設定されているかを感覚的につかんで下さい。その後、いくつかの生音のトラックを使って、可能なかぎり大きな音になるようにドライブ、アタック、リリースを調整してみて下さい。通常と同様、メータが小刻みに動いている場合に、最も明白な効果が得られます。

メータの動作はかなり謎めいていますが、左から順に次のことを表しています。

・左右の入力。かなり高いレベルを得るために、十分なシグナルを提供しています。

・リリースゲート。入力が低い場合に、すべてのリリースタイムをロックします。これにより、バックグラウンドノイズのレベルのポンピング(上下に動くこと)を押さえます。リリースゲートがオンの場合、インジケータは上になります(ゲインがすべての区画を閉ざしていることに注意して下さい)。

・広帯域用と高音域用の2つのエキスパンダ。これは、エキスパンダのゲインを示しています。そのため、これが下降すると、シグナルはシャットダウンされます。

・左右のマスタAGCゲイン。通常、アタックとリリースはかなり遅めにします。これにより、全体的なレベルはダイヤルの中央に保持されるはずです。

・4つのバンド(帯域)のゲイン。最も低い位置がユニティゲインです。

・左右のリミッタの動作。このインジケータが下まで押し下げられる場合には入力レベルを落として下さい。

・左右の出力レベル

練習を積めば、どのような素材を扱っても、十分に満足のいく音を作ることができるようになるはずです。結果を判断する最も良い基準は、小さい音や大きい音で再生したときに同じ音楽として聞こえるようになっているかどうかということです。

参照

omx.4band OctiMax 4-band コンプレッサ