イントロダクション

このマニュアルでは、ごくシンプルな概念から始め、学習を進めるごとに新しい概念を積み重ねていく方法によって、Max のすべてを教えることができるように段階的なコースを設定しています。このコースは主としてプログラム経験を持たない新しい Max ユーザを対象としていますが、プログラミングの知識を持っている場合でも、このチュートリアルは Max について学ぶための良い方法となります。

チュートリアルは最初から順に読み進めるように作られています。各々のチュートリアルには Max プログラムのサンプル(ドキュメント)があり、これは Max Tutorial フォルダに収められています。このドキュメントは各章のテキストで述べられている概念の「動作する説明図」です。これによって、Max の動作を見て、自分自身で試してみることができます。私たちは、単にマニュアルだけを読むことよりも、この実践的なアプローチが Max を学ぶ上でより効果的な方法であると感じています。

このチュートリアルを終える頃には、Max とその可能性について十分な理解を得られていることでしょう。また、おそらくあなた自身のMaxアプリケーションのための多くのアイデアも浮かんでいるかもしれません。

それぞれのチュートリアルを読みながら、Max Tutorial フォルダの中の対応する Max ドキュメントを開いて下さい。いくつかのチュートリアルでは、「小テスト」の形式を取っていて、次に進む前にそれまでの内容を理解しているかどうかの確認を行なうことができます。各チュートリアルの最後では、その章の内容についてより理解を深めるために参照することができる Max ドキュメントの他のセクションを紹介しています(「参照」と書かれています)。

初めて Maxに触れるという初心者の場合、基礎(Fundamentals)マニュアルの「セットアップ」と「概説」というセクションにまず目を通してから、チュートリアルに進むことをお勧めします。また、max-help フォルダにあるヘルプファイルを見ることによって学習したり、Max リファレンスマニュアルのMax オブジェクトシソーラスを眺めることによって学ぶこともできます。サンプルパッチでは、他の人がMax によって制作したプログラム例のいくつかを見ることができます。

マニュアルの記法

Max の中心となるブロックはオブジェクトです。オブジェクト名は常に、このような (Like this) ボールド体で書かれています。

メッセージ(オブジェクトによって送受信されるアーギュメント)は、このような (Like this) プレーン体で書かれています。

「参照」の中でレギュラー体で書かれているものは、このマニュアル、またはリファレンスマニュアルのセクションです。

訳注:ナンバーボックス、メッセージボックス、フロート・ナンバーボックスはカナ表記で、その他のオブジェクト名は英字によるボールド体を用いています。JavaScriptのプログラムコードなどはセリフの英字を用いています。

MIDI 機材

このマニュアルの最初の方では直接 MIDI を取り扱わずに、Max の要素の一部について学習します。しかし、それ以降のチュートリアルでは、非常に広範囲にわたって MIDI 環境が必要となります。そして、サンプルプログラムは、使用される MIDI 機器やコンピュータとの接続に関して、一定の前提に基づいて作られています。チュートリアルを最大限有効に利用するために、次のことが前提になっていることを覚えておいて下さい。

  1. 61鍵のベロシティ・センス付きのキーボードとピッチベンド、モジュレーションホイールを持つポリフォニック・シンセサイザまたはサンプラを使用して下さい。キーボードが MIDI チャンネル 1 で送信を行ない、シンセサイザがオムニ・オンモードで受信するようセットされていれば理想的です。
  2. キーボードの MIDI Out が MIDI インターフェイスの MIDI In に、インターフェイスの MIDI Out がシンセサイザまたはサンプラの MIDI In に接続して下さい。
  3. このチュートリアルの目的のために、MIDI インターフェイスはモデムポートまたはコンピュータのUSB インターフェイスに直接接続して下さい。

あなたの機材がチュートリアルの前提とする構成に正確に合致していない場合でも、なるべく前提としているセットアップに近づけるよう努めて下さい。シンセサイザのユーザーズマニュアルを読み、そのMIDI 機能について十分理解しておくとよいでしょう。

チュートリアルパッチは、内蔵シンセサイザを持たないキーボードコントローラではなく、ローカルコントロール・オンのキーボードシンセサイザ(弾いたときに、他の MIDI 入力を受信せずに音がなるもの)のためにデザインされています。キーボードと音源に個別のものを使用している場合、Max チュートリアルフォルダの thru というパッチを開いて、ポップアップメニューから入力ポートと出力ポートを指定し、チュートリアルパッチを実行している間は、それを開いたままにしておいて下さい。これによって、キーボードのMIDI出力が Max スルーして直接音源に送られ、キーボードシンセサイザをエミュレートします。

訳注:上記のようなセッティングをお持ちでない方も多いのではないでしょうか。実際には、音源は内蔵ソフトシンセで対応可能です。(基本(Fundamentals)マニュアルには、内蔵ソフトシンセサイザに関する説明があります) キーボードコントローラの接続を前提としているチュートリアルも多くありますが、コントローラが必要になるのは、notein や midiin などのMIDI 受信用オブジェクトだけです。 ある程度 Max のプログラミングがわかるようになってきたら、チュートリアルの MIDI受信用オブジェクトの代わりに ksliderオブジェクト(キーボード型のユーザ・インターフェイス・オブジェクト)や他のユーザ・インターフェイス・オブジェクトを繋いで試してみることもできますので、必ずしも機材にこだわらず読み進めてみて下さい(実際、チュートリアルパッチの中には、この方法が可能なように作られているものもあります。) もちろん、上の1 〜 3 のような設定が組めれば理想的なことは間違いありません。